【実写レビュー】ソニーのSEL100F2.8を現役カメラマンが使ってみた!

はじめに

 今回は、SONY純正ラインナップでも「最高位」に位置するG Masterシリーズのうちの1本、SEL100F2.8GMについて紹介する。STF(Smooth Trans Focus)レンズに分類されるレンズで、直訳の通りボケの滑らかな表現が特徴と言える。「解像とボケの究極の両立」をコンセプトとするG Masterシリーズの中でもボケの表現に焦点を充てている本レンズ、果たしてどんな描写性能を見せてくれるのか、実写トライを交えて吟味していく。

基本情報

 詳しい製品情報については公式HPの閲覧をお勧めする。基本的な仕様・スペックは下記の通りである。

主な仕様
• SONY Eマウント用 (フルサイズ対応)
単焦点STFレンズ (焦点距離 100 mm)
• F値 2.8 22 (T 5.6 )
最短撮影距離 0.57 m (マクロ域切替時)
• AF機能搭載
光学式手ぶれ補正

 SEL100F28GMは絞り開放F2.8/焦点距離100 mmの単焦点STFレンズ。レンズ構成は10群13枚、加えてアポダイゼーション(APD)光学エレメントが備わっており、単焦点レンズにしては複雑な構成といった印象だ。絞り羽根11枚の円形絞りで、ここにもボケ表現へのこだわりが見られる。

 詳細は後述するが、APDエレメントの搭載に伴いF値での露出計算が実際の光量と大きく乖離するため、絞りリング・ボディ側設定画面ともにT値が表記される仕様だ。高パフォーマンスモデルなので、AF機能、光学式手ぶれ補正機構は当然の様に備わっている。また、マクロ域切り替え機能が備わっており、ボディ機種にもよるがWD≒40 cm(カメラを構えた状態で腕を伸ばしたくらいの距離)での近接撮影が可能だ。

現代的なデザイン

  カメラに関わらずSONYのパッケージには個人的に好感を抱いており、本レンズも例外ではない。スタイリッシュさに振り切らずに「分かり易さ」を意識しているようなパッケージデザイン、梱包も丁寧でユーザーへの気遣いを感じる。

 そしてレンズ本体のかっこよさである。さすがG Masterと言うべきか、レンズ単体でも美しいフォルム。胴部表面のテクスチャ塗装はαシリーズのボディと同様のもので、装着時の統一感といい、高級感を感じさせる絶妙な質感だ。橙色のGラベルやレンズ名の刻印は金属光沢を放ち、インテリアとして飾ってあっても遜色のないような、存在感漂う現代的で完成された外観だと感じる。

何気ない物撮りでもこのかっこよさ、主観的な意見だがデザイン性は素晴らしいの一言。

 最大直径φ85.2 mm、レンズキャップ装着時の全長は約180   mmと大型。単焦点レンズとはいえボディ装着時の迫力は凄まじいが、高スペックモデルで中望遠域であればこんなものだろう。重量700 gと大きい上に重量級だが、ストラップで首から下げてみると「意外と重たくない」というのが筆者の所感である。また、レンズフードは樹脂製だが、本体同様のテクスチャ塗装が施されており安っぽさは一切感じない。

 フォーカスリングは程よい太幅のラバー製。対照的に、絞りリングとマクロ切替リングは細幅の樹脂製となっている。どちらもガタなく組みついており、随所に品質の高さが窺える1本だ。

機能と操作性

 上質な見た目もさることながら、搭載する機能も必要十分と言えるだろう。AFはダイレクトドライブSSM(Supersonic wave motor)方式。電圧負荷に対して物理的な力を得る逆圧電効果を利用しており、駆動の素早さと停止位置の正確さが特徴だ。

 高スペックモデルによく見られるAF/MF切替スイッチも搭載しており、シビアな合焦に挑む際も瞬時に設定を変える事ができる。フォーカスホールドボタンはAF-Cモード時にも使用できるため機動力も高い(親指フォーカス派の筆者にとっては出番の少ない機能だが)。これらスイッチ群の反対側には絞りリングのクリック切替スイッチがあり、操作におけるクリック感をON/OFFで切り替えられる。OFF時のシームレスな動きは滑らかで、映像表現において活躍しそうだ。フォーカスリングは少ない力でスルスル動く印象で、細かい微調整もストレスなく行える。電気信号によりモーター駆動させる方式だが、筆者の体感では気になるタイムラグはなかった。

 そして本レンズ特有の「マクロ域切替え機能」。レンズ根っこに位置する切替リングにより、最大撮影倍率0.25倍の近接撮影が可能だ。常にロックがかかった状態で、リング上の小さなボタンを押しながら回す少し面倒な仕組みになっているが、選択肢は2つだけなので慣れればブラインド操作も容易だろう。

 冒頭でも触れたが、STFレンズであるが故に、絞りリングにはT値の表記がなされている。少し話が逸れるが簡単な解説を少し。STFレンズが「溶けるよう」と比喩される美しいボケを生み出すのは、APDフィルターによる効果が大きい。このAPDフィルター、ざっくり言うと円形グラデーションがかかったNDフィルターの様なもので、レンズ縁の光透過率を意図的に下げる構造になっている。故に、絞りを開けた状態、つまりレンズ端の光を拾う設定では、同じF値の通常レンズと比べて入射する光量が少なく、F値での露出計算が合わなくなるのだ。そこで用いられるのがT値(TはTransmissionの頭文字)。F値に透過率の逆数の10倍を掛けた数値(T値=F値×1/√透過率(%)×10)で、算出式を見れば一目瞭然、透過率を考慮した値であるためより実際に近い露出計算ができる。

なんだかややこしいと感じるかもしれないが、レンズ透過後の光で露出を計測する昨今のカメラでは、必ずしも必要な知識ではない。理解しておくべきは、本レンズの開放F2.8は被写界深度の指標であり、APDフィルターの影響で光量はF5.6相当まで落ちるという事だ。

実写レビュー

 本レビューではカメラボディにα7RⅡを使用して撮影。花や虫、動物のマクロ的な撮影をはじめ、風景やスナップ的な撮影にも試みた。なお、作例は全て撮って出しとなっている。


ボディはSONY α7RⅡを使用。江の島とその周辺で実写トライを行った。

 先ずはSTFレンズの本領、ボケについて。上がったハードルを余裕で超えてくる様な息を飲む美しさ。川沿いを歩きながら撮った1枚、フェンス越しに水面で反射した光が柔らかい玉ボケとして描写されている。仰ぐように撮った蜘蛛の写真、背景のふんわりしたボケ表現とは対照的に、合焦部の解像感は精細で、全体を見た時の立体感は見ていて気持ちがいい。どちらの作例もそうだが、前ボケ・後ろボケともに高い表現力が窺える。


ISO100 F2.8(T5.6) SS1/250


ISO100 F2.8(T5.6) SS1/500

 縦構図で撮った1枚。やさしく美しい背景ボケにより、被写体の際立ち方が素晴らしく、焦点距離100mmということを踏まえるとポートレートでの活躍も大いに期待できるだろう。絞り開放でも合焦部の解像感は高いが硬い印象はなく、モデルも喜ぶ写りが得られそうだ。


ISO100 F2.8(T5.6) SS1/250

 さすがG Masterレンズ、絞り開放でも合焦部分の解像感は高く、溶けボケと相まって作品的な仕上がりが手に入る。同じ構図で絞った設定の作例、錆の質感まで伝わってくる様な高い解像感。F11まで絞るとAPDエレメントの恩恵はほぼ無いが、ボケ同士が干渉するザワザワ感はなく(日陰&手持ちにつき、感度で露出を稼いだためノイズ乗りはご勘弁)、解像とボケの高い表現力は広い設定範囲で実現されている。


ISO1250 F2.8(T5.6) SS1/100


ISO5000 F11 SS1/100

 マクロ域切替による近接撮影に挑んだ作例。最短撮影距離57 cm、いわゆるマクロレンズと思って撮影に挑んでしまうと「思ったほど寄れない」と感じてしまう距離感だが、中望遠域でこの距離まで寄れれば十分に印象的な撮影ができる。近接でもボケみの美しさは変わらず、合焦部のディティール表現も併せて立体的な描写が印象的だ。どの作例も狙った被写体にジャスピンできたが、「近接、絞り開放」と被写界深度が浅く合焦の難しいシチュエーションでも、優れたAF機能により苦労なく撮影を楽しむ事ができた。


ISO100 F2.8(T5.6) SS1/250


ISO320 F2.8(T5.6) SS1/100


ISO200 F8 SS1/100

 ボケ表現に秀でた本レンズの背反は「暗さ」だろう。絞り開放でも露出換算では実質F5.6と、手持ち撮影でシャッタースピードをかせぎたいシチュエーションでは感度を上げざるを得ない。室内でハムスターの近接撮影に挑んだが、動きのある被写体でシャッタースピードを下げ渋ったことで感度はかなり高い設定。分かりづらいかもしれないが、ノイズ乗りは等倍表示で気になるレベルだ。EV表をAV値基準に見ると分かりやすいが、室内や夕暮れ以降、日中でも曇天で暗い環境では設定に苦労することが否めない。


ISO3200 F2.8(T5.6) SS1/100


ISO3200 F2.8(T5.6) SS1/100

 前述の通り決して明るいレンズではないが、晴れた日中であればシャッタースピードが稼げるため、手持ちのスナップ撮影も可能だ。中望遠の切り取るような構図に柔らかく美しいボケ表現が加わることで、何気なく撮影した写真も作品のような雰囲気が漂う。


ISO100 F2.8(T5.6) SS1/200


ISO320 F2.8(T5.6) SS1/100

ISO250 F2.8(T5.6) SS1/100


ISO400 F2.8(T5.6) SS1/200


ISO320 F2.8(T5.6) SS1/100

 おまけに、がっつりレタッチした作例を1枚。STFレンズ故にボケの表現に偏ったコメントが多くなってしまったが、風景撮影における解像感の細かさも素晴らしい。中望遠域ならではの絵画的な表現にも優れたレンズだと言える。


ISO100 F8 SS1/500

まとめ

 今回はSONY G Masterシリーズの「SEL100F28GM」について、作例と共にレンズの特徴について紹介した。

 SONY純正の中でもプロユースに応えるG Masterシリーズというだけあって、筆者の所感では一切の問題点は見当たらなかった。気持ち昂るラグジュアリーな外観、高度な表現力、操作感にもストレスは無く「撮影」の楽しさを改めて実感する事ができる良いレンズであった。何より特筆すべきはボケ表現。APDエレメントの恩恵である輪郭の柔らかい美しいボケは、ファインダー越しに景色を覗くだけでも楽しく、得られる成果物のクオリティーは自身の想定を超えてくる印象があった。

 一方で、暗所での撮影は設定面での厳しさが否めない。日常用途としては設定に縛りを感じる難しいレンズだが、裏を返せば、撮影イメージが具体的な「作り込んだ撮影」にはよく応える1本だと言える。

 また、汎用性を求める方にとってはクセのあるレンズと言えるだろう。日常的な趣向としてスナップを好む筆者としても、瞬間的な撮影の難しさから打席に立つ頻度はそう高くないレンズといえる。STFレンズに興味を持たれている方はもちろん、ベーシックなレンズを既に所有していてステップアップに燻っている方などにも、是非試して頂きたい1本である。

 

関連記事

  1. 【感動】SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN の実写レビュ…

  2. コンビのハイローチェア『ネムリラ』の口コミと現役ママによる仕様レビュー…

  3. 【口コミ】我が子も夢中!ジャンパルーを現役ママがレビューしました!

  4. 【口コミ】バーミキュラのライスポットを現役主婦がレビュー!普段のお米が…

  5. 【最新レビュー】電動バウンサー「ママルー」の口コミと現役ママによる徹底…

  6. 【プロが解説】ソニーのFE70-200mm F4 G OSSを現役カメ…

  7. 【比較記事】人気自動調理器3つを実際に使用レビュー!コスパNo.1はど…

  8. 【プロがレビュー】GoPro Hero9を現役カメラマンが実写レビュー…